相続をFPに相談する意味とタイミング
相続は「誰が何をどれだけ受け取るか」だけでなく、税金や手続き、家族関係、生活資金まで影響します。ファイナンシャルプランナー（FP）は、お金の流れを中立的に整理し、弁護士・税理士・司法書士などと連携しながら全体像を示します。生前の準備から発生後の手続きまで、時期を逃さない進め方を相談できるのが強みです。
相続を考え始めたとき、親の体調や住まいの変化があったとき、保険や不動産の見直し時期は相談の好機です。
大きな方針を決めた直後に細かな論点が浮かびやすいため、次の小セクションで「よくある課題」と「FPに相談するメリット」を整理します。全体像→個別最適の順で進めると、家族の合意形成がスムーズです。
よくある課題
・相続財産の全体像が把握できない（現預金・有価証券・不動産・借入金・名義預金などが散在）。
・遺言がない、または内容が現状に合っていない。
・二次相続（配偶者の逝去後）を見据えた配分・税負担の設計が不足。
・納税資金や当面の生活資金の確保策が不明確。
FPに相談するメリット
・家計視点で「のこす・そなえる・つかう」のバランスを設計できる。
・節税一辺倒ではなく、将来の収支や介護費用を踏まえた現実的な計画にできる。
・各専門家に依頼する前の下準備が整い、手戻りや費用の無駄を抑えられる。
・家族会議の議題や決め方を第三者が整理し、感情的対立を和らげやすい。
生前対策の基本：遺言・贈与・保険・不動産
生前対策は「誰に何をどのように渡すか」を明文化し、手続き・税・資金繰りのリスクを減らす取り組みです。遺言は公正証書にして最新の家族・資産状況を反映すること、贈与は長期計画で行い証跡を残すことが要点です。生命保険は受取人指定と金額の妥当性、納税資金の確保という観点で役立ちます。不動産は評価・収益性・管理負担を踏まえ、共有回避や換価の選択肢を検討します。
生前に検討すべき論点は多岐にわたります。次の小セクションでは、検討の順序とチェックポイントを示し、優先度の高い項目から着手できるようにします。短期間で一気に決めず、段階的に合意形成を進めましょう。
優先順位の付け方
・相続人の生活資金と介護費用の見込みを先に確認する。
・不動産の利用方針（住む・貸す・売る）を仮決めし、維持費と税を試算する。
・受取人指定や口座の所在など、手続き上の詰まりやすい点を先に解消する。
見直しのタイミング
・家族構成の変化（結婚・出産・離婚・死亡）。
・資産構成の変化（不動産の取得・売却、事業の承継、投資方針の変更）。
・税制や社会保障の改正。
発生後の手続きとスケジュール感
相続発生後は、死亡届や口座凍結解除、遺産分割協議、名義変更、相続税の申告・納付など、期限付きのタスクが連続します。FPはタイムラインを作り、チェックリストで抜け漏れを防ぎ、家族の役割分担を見える化します。
発生後の動きは「情報の収集」と「合意形成」を並行して進めるのがコツです。次の小セクションでタスク一覧と、遺産分割を円滑にする進め方を示します。
主なタスク例
・戸籍収集、残高証明、不動産登記情報の確認。
・相続財産目録の作成と評価の仮置き。
・遺産分割協議書の作成と実印・印鑑証明の準備。
円滑に進めるコツ
・短時間の家族会議を定例化し、議題と宿題を毎回明確にする。
・結論が出ない論点は期限と次の打ち手を決めて先送り管理をする。
・専門家に依頼する範囲と費用感を事前に共有し、合意形成の材料にする。
相談の進め方：準備物と当日の流れ
初回相談では、家族構成、資産負債の一覧、収支、保険証券、不動産資料、過去の申告書などを持参するとスムーズです。FPはヒアリングに基づき、目的（節税・資金確保・家族調整）の優先度を確認し、想定シナリオを複数提示します。
準備が整っていなくても、分かる範囲から対話を始められます。次の小セクションに、具体的な準備リストと面談後のアクションをまとめました。
持参すると良いもの
・身分証、続柄が分かる資料、連絡先一覧。
・金融資産の明細、借入の返済予定表。
・保険証券、不動産の固定資産税通知・登記事項証明書。
面談後のアクション
・家族会議の日程調整と議題の共有。
・不足資料の収集と評価の更新。
・遺言や贈与方針のたたき台を作成し、専門家へ連携。
よくある失敗と回避策
ありがちな失敗は、情報格差を放置すること、一次相続だけで最適化して二次相続で負担が増えること、名義変更や申告期限の失念です。これらは「見える化」「期限管理」「第三者の同席」で防げます。FPは事実と感情の交通整理を行い、合意可能な落とし所を探る伴走役になります。
最後に、相続は一度きりのイベントですが、準備と話し合いの積み重ねで結果は大きく変わります。早めの相談で選択肢を広げ、家族の安心と資産の守り方を計画的に整えていきましょう。